トルコ原発、建設断念! 日本の官民連合

日本の原発事業が岐路に立たされる

三菱重工と伊藤忠商事が協力し合って官民で受注を狙っていたトルコの原子力発電所の建設断念が避けられなくなったことで、日本の原発ビジネスの行方の不透明さが一段と増したようです。

トルコの当初の原発計画の概要
規模 4基、出力合計約450万キロワット
形式 加圧水型(PWR)
製造 三菱重工、仏アレバ(現フラマトム)
運転 仏GDFスエズ(現エンジー)
総事業費 220億ドル(約2兆円)

建設費が当初想定の2倍近くに膨らみ、トルコ側と条件面で折り合えなかったとのこと。

トルコでの原発新設は日本政府のインフラ輸出戦略の目玉の一つです。国内で原発の新設計画が見通せないなか日本は原発戦略の立て直しを迫られています。

原発新設は2013年に日本、トルコ両政府で合意しました。三菱重工を中心とした日仏企業連合が黒海沿岸のシノプに原発4基を建設する計画でありました。当初は17年に着工し23年に1号機の稼働を目指していましたが遅れているのが現状です。

建設を担う三菱重工は7月末、事業化に向けた調査の報告書をトルコに提出しました。建設費は当初想定の2倍近くで、総事業費は5兆円規模に達したもよう。11年の東日本大震災を受けて、安全対策費が大幅に上昇したのです。

トルコの通貨であるリラの大幅な下落もコスト増につながった要因です。三菱重工は総事業費の見直しを進めましたが、建設後の売電価格や資金計画などでトルコ政府と折り合えなかったとみられます。

袋小路の国産原発輸出、トルコ計画断念

思い返せばトルコでの原発計画は2013年に安倍晋三首相とエルドアン首相(現大統領)の良好な関係をもとにスタートしました。23年の稼働を目指し、三菱重工を中心とし、仏アレバ(現フラマトム)などを含む日仏企業連合が黒海沿岸のシノプに原発4基を建設する計画だったのです。

政府関係者は「円満離婚だ」と強調していますが、交渉は難航していた模様ですね。

「これでは受け取れない」。今年3月ごろ、三菱重工が内々に伝えた事業費の見積もりは、トルコ政府にはねつけられたと言っています。膨らむ安全対策費で建設費が高騰したためだそうです。

協議の難航を受け、伊藤忠商事が3月末で離脱。三菱重工が18年7月末に提出した報告書では建設費が当初の2倍近くに膨らみ、総事業費は5兆円規模に達したとNEWSになりました。

トルコはロシアや中国からも原発技術の導入を進めています。低価格で原発輸出を進める中国・ロシアと比較され「価格差が開きすぎた」と三菱重工幹部が言いました。今夏以降のトルコの通貨リラ急落も響いたのでしょう。

日本はこれまで原発技術で世界をリードしており、政府が技術輸出を後押ししてきただけに、原発事故で国内の新設計画が止まると、日本企業はさらに海外に活路を求めました。

しかし、世界的に原発の建設コストが膨張。日本勢が受注競争で優勢だったベトナムやリトアニアの新設計画も相次ぎ白紙撤回や中断にったのです。現在、日本勢で唯一残るのは、日立が受注を目指す英国中部の案件のみです。

原発を敬遠する動きは次世代の技術開発にも影を落としています。日本がフランスと進める次世代原子炉開発で、仏政府は20年以降、計画を凍結する方針を先日、日本に伝えました。これは日産ゴーン社長の逮捕によるフランス政府の復讐と見ています。なお、使用済み核燃料を減らす高速炉技術で、自前の高速炉計画を持たない日本にとって大きな打撃となっています。

トルコの原発建設はロシアと中国がキーマンになる!

トルコのエルドアン大統領は18年7月27日、外遊先の南アフリカでトルコメディアの取材に応じました。日仏連合が建設予定のトルコ2カ所目の原発について、「どうやら弱い状況がある」と述べ、進捗が芳しくないとの認識を示唆した模様です。3カ所目の計画について「中国は前向きだ」「4カ所目(の協議)も開始できる」とも強調し、中国側との協議の進展に満足感を示していました。

すでにトルコではロシアが18年4月に1カ所目の原発に着工しています。ロシアは武器輸出と原発をパッケージにしてインフラ輸出を進めているとの見方があり、大変したたかな戦略だと思いました。経済産業省幹部は「ロシアは兵器を原価で買ってくれた分、原発をディスカウントする可能性もある。左手に爆弾、右手で原発だ。我々は右手しかないから苦しい」と語ったそうです。それに対して多数の原発計画を抱える中国は量産化でコストを抑えやすい。

トルコの原発計画ではすでに企業連合の一員だった伊藤忠商事が夏に離脱を決めています。

トルコと日本の関係を良好に築いていく施策なだけに大変残念な結果となりそうです。